悪役ってかっこいい! そう思いません?厨二病かな?

悪役だいすき! 悪役だいすき!

悪役だいすき!

悪役だいすき!


悪役ってかっこいい!

そう思いません?厨二病かな?


そうだな、例えばハンニバル・レクター博士とか。かっこよくないかな?
この前、友人に言ったら「えっ。気持ち悪い…よくあんな映画みれるね。」って言われたけれども。

でもなんで悪役って惹かれるんだろ?

たしかに冷静になってみると、レクター博士とか最悪。
近所とかに住んでたら、警察に通報するよね。その前に殺されちゃうかもしれないけど…

レクターさんきっと、人の命なんてものに理解はないだろうし、倫理や道徳なんて通用しない。顔色一つ変えないで人殺しちゃうし、泣いても喚いても許してくれないし。てか、きっと復讐なんてほとんどしないよね彼。
あ、もちろん言いたいのは現実的な人の話じゃないのよ。

悪役って「役」についてね。

ふと思うんだけども、ハンニバルとか道徳的に良くないっていう人達はアンソニー・ホプキンスに殺人趣向があると勘違いしてるんじゃないかな。役だよ?演技なんだよ?

まあいいや。
それで、どうして悪役ってかっこいいんだろ?って話だ。

アニメだったらムスカとか、映画ならバットマンのジョーカー、最近見たのではソウのジグソウなんかもそうだし、レオンのゲーリーオールドマン扮するスタン刑事なんかもクールだ。

僕があげた人たちに偏りがあるのは置いといて、とりあえず彼らってどんな生き方をしてるんだろ?って考えると、悪役のかっこよさが見えてくる気がする。

主人公と比べるとわかりやすんじゃないかな?
ムスカの敵役はパズー、ジョーカーはバットマン、ジグソウやレクターは…刑事?、スタンはレオン。

悪役は主役の考え方や倫理観を否定するために、対立するために登場してるよね。特に刑事と犯罪者なんていうのは「保守」と「破壊」という構図になってて、人は殺すし、街は壊すし、悲しませるし、ほんとうに悪役って否定的。

それは物語の作り方として当然なんだけど、(悪役が主人公の価値観を肯定したら話が進まない)ここに面白いパラドックスがある。

つまり悪の方がじつは肯定的じゃないかなって。

バットマンとか典型だけど、彼って社会正義に隷属してて、それを疑ってない(ノーラン監督のはジョーカーのせいで葛藤してるけど)し、その正義に抗おうとはまずしない。正義に対して盲目だし、従っているよね。

その意味で根は小市民。
レオンなんて殺し屋なのに考え方はじつに道徳的だし、レクターさんを捕まえようとする警察なんて市民の暴力を代行する人たちでしょ。

スガシカオの歌に「正義の味方」ってのがあって、ある庶民的な家族がほんとは正義の味方なんじゃないか?っていう意味分かんない歌なんだけど、そういうことだと思う。
正義の味方って、家庭臭するよね。

逆に悪役って法とか超越して自由なんだよね。
才能もあるからだけど、やりたことやって人生を謳歌してる。

人を殺すとかすごくリスキーな作業だし、苦痛や疲労も伴うのに、それを強い意志と、高い技術で貫徹する姿は成功者とさえ呼べるかもしれない。(現代の成功者と呼ばれる人たちが悪いことをするのはこの辺りに理由があるかもしれないな。)
法を踏みにじり、道徳に唾吐くことで世界はもっと広くて寛容なんだということを示す。

つまるところ、彼らは僕たちの視野を広げてくれる存在なんじゃないかなってわけ。

逆につまらない悪役は内面があって、道徳も理解してる。(火曜サスペンスの悪役!)でも完璧な悪役は内面もないし、理解も拒絶する。支離滅裂でストーリーもない。
役は完璧じゃないと役じゃないし、嘘を演じ切るから役なのだし、虚構の法則を打ち立てるから面白いのであって、現実の劣化版を作るくらいなら現実のほうが面白い。(ほんと火曜サスペンスとか科捜研とかああいうの嫌い。)

だからこの前見た「ファニーゲーム」は感動したな。
(もちろん監督の潔癖なほど真っ直ぐな倫理観・正義感にもしびれたのだけど。)

悪と善があるとして、悪が混沌なら、善は理性。だからほんとうの悪って理性的に理解できない規則で動くはずなんだよね。

話がそれちゃった。
だから悪役って「見て!世界は自由だ!諸行無常なんだよ!色即是空だよ!」ってパーフェクトに示してくれて、いっつも怖くて怖くて仕方のない外界を虚構で塗り替えてくれる人たち。

日常に縛り付けれられた人間にとってのヒーローだと言っても過言じゃない。僕らの知らない、理性の光が届かない世界を案内してくれる人たち。哀しき虚構の担い手。

そう、悪役ってどんなに法を踏みにじっても、人を殺してもやっぱり役よね。
役って内面がまるっと表面にでちゃってる状態だから、すごく空虚。それは映画が虚構だっていうのもあるんだけど、その虚構の中でゴジラみたく暴れるから、もっと虚しく見える。

ひとりで作った砂の山を壊す子どもみたい。
でも、その一瞬、そのときだけ、ほんものみたく法を破壊してみせる。「世界は我の手の中にある」と高らかに謳いあげる。

それが悪役の美学じゃないかな。