チョコミントアイスって不思議な食べ物ですよね。 色も毒々しいし、味も苦いんだか、スースーするんだか、甘いんだかよくわからない。

あまりに人間的なチョコミント あまりに人間的なチョコミント

あまりに人間的なチョコミント

あまりに人間的なチョコミント


チョコミントアイスって不思議な食べ物ですよね。
色も毒々しいし、味も苦いんだか、スースーするんだか、甘いんだかよくわからない。

もちろんこの味も好きなんですけど、抽象的に好きです。

そうだな、イメージとしてはアンディ・ウォーホル。

アメリカの高度経済成長期みたいな味がする。そもそもアイスという食品自体、冷蔵技術の発展なしには存在できない資本主義的な食べ物だし。
すくなくとも自然な料理の味じゃない。チョコレートにスポンジをあわせましょうとか、クッキーとあわせましょうというのはむしろよくわかる。それぞれの原材料の味が昇華されて、ひとつの料理としてハーモニーを奏でているから。

だけど、チョコミントのミントとチョコの相性はなんとも言いがたい。さっき、ウォーホルという名前をあげたけど、あのズレたシルクスクリーンみたいで、なんとなく重なっているんだけどズレてる。
ズレているせいで、花は花を止めてしまい、人物はその奥行を喪失している。

チョコミントの、チョコとミントは分けることができない。

別の言い方をすると、人工的とも言える。
例えばコーラとか人工的。色も黒いし、大量に同じ味がつくりだされている。ほとんど薬品みたい。チョコミントにもそんなところがある。
ウォーホルの作品も手描きじゃないし、機械みたい。だから、あんなの人間の飲み物じゃない、人間の芸術じゃないみたいなこという人がいるけど、逆だと思うんですよ。

人間が生まれると、すぐに外界から遮断された保育器に入れられ、予防注射をされ、細菌から隔離する。体毛が退化しているために、毛皮の代わりを常に身につけていなければならず、顎の小型化によって食品は加工しなければならない。

自然バンザイみたいな人たちってこれらの事実にあまりにも無頓着ですよね。これだけ複雑な言語をもち、大陸を破壊する兵器を保有し、日々ほかの生物を根絶やしにしている。

それが人間じゃん。

この地点に来てはじめて、芸術も登場すると思うんですよ。絵画だって、彫刻だって、音楽だって、演劇だって、どれも人工物ですよね。あらかじめ世界になく、人間が作ったという意味で。

だからぼくのなかで、ウォーホルとチョコミントって重なっている。どちらも工業的で、生きていくのには必要のないものだし、毒々しいから。だいたい、生きていくためだけの人生なんて、ベッドの上の点滴みたいなものでしょ。

ガンジーとかいう人は、食べるのは味わうためではなく、生きるためにせよと言ったようだけど、少なくとも芸術を愛する人はその逆でないと。パンのみに生きるにあらず、ってほうがよっぽど人間的だと思うよ。

人間的な、あまりに人間的なチョコミントよ、永遠に。