LINE?来てたっけ?ちょっとまって確認する。

ねぇなんでLINE無視したのさ? ねぇなんでLINE無視したのさ?

ねぇなんでLINE無視したのさ?

ねぇなんでLINE無視したのさ?


LINE?来てたっけ?ちょっとまって確認する。ほんとだ。読んだつもりなかったけど、来てるね。ときどきこの携帯おかしくなるんだ。

そうだったの?

うん。前にも変な雑音だけの電話かけちゃったことあったでしょ?

ならいいんだけど。その、内容が内容だったから嫌われたり、不快にさせちゃったかと思って、ずっと不安だったんだ。

ずっと不安?確かにこの内容は少し感情的だね。でも私がそれくらいで君を嫌いになったりすると思うわけ?

そうじゃないんだ。でも、

でも、なに?
でも心配になったんだ。捨てられるような気がして。

君もなかなか愉快な妄想家ね。第一に私は君を捨てることはできない。なぜなら私は君を所有していないから。第二に、私は「人を捨てる」という考え方も持ち合わせていない。嫌うとしたら真っ向から、嫌いだってはっきり言うから。

そんなこと言って、でも本当は読んでて、返信すんの面倒くさいから、聞かれたら携帯のせいにしようと思ってたんじゃないの?
なぜ君はそこまでひねくれたのかな。そんなに私の言葉は信頼できない?

信頼できないというわけじゃないけど、心配になるんだよ。

心配になる?

君が僕を嫌いになるんじゃないかって。友情とでもいうべき関係が壊れるんじゃないかって。

友情?なんだか変な話になってきたね。私は友情なんて言葉、使いたくないな。
じゃなんて呼べばいいのさ?

関係でいいじゃない。私はいつも、なぜ人はある人間同士の関係を友情だとか、愛情だとか、恋人だとか、知り合いだとか自分勝手な想いを含めて語るんだろうと思うよ。

それは、それだけ大事に想っているからだよ。

大事に想うってどういうこと?

大事は大事だよ。それだけ心を配るってことだよ。
心って誰かにあげられるの?

できないよ。けど、日本語でそう言うの。じゃ心を「割く」って言えば君は満足するの?

割いた心はどうなるの?

どうなるって…どうなるんだろう。

君はさ、「大事に想う」を勘違いしてるんじゃないかな?つまり大事に想うって相手になにかを手渡したり、あげたり、割いたりすることじゃないんじゃないかな。

じゃあどうするの?

想うだけ。ただ想うだけ。君が「大事に想う」と言っているのはただの詭弁。内実は、私や誰かになにかを期待をしている。想ったら想われるなんてないの。

なんでそんなふうに言い切れるのさ。

なぜ「想ったら想われる」がないかと言うと、想いは一つだから。
チープな歌詞みたいだ。

君の想いを私が考えるとする。けれどそれは私が考えた君の想いでしかない。なにより私が君の想いを考える時、基礎にするのは私の想い。残念だけど、君の想いは私にはわからない。

いろいろ反論できそうだけど、それでもいいよ。だって僕が君に想いを馳せて、君が僕に想いを馳せてくれていれば、それで友情が成立するもん。

そうだね。そうしたらどれだけ素敵だろうね。けれど、それを君はどこから見ているの?

どこからって?僕から?

うん。ならさっきの前提をそこに加えると、つまり君は私の想いを知れないとするなら、君は友情の成立を理解することはできないことになる。

なら君は僕を友人だと想ってくれてないの?

そんなことはない。でなければ、こんな話してないよ。

なら友情が成立しているじゃん。

そう?私は嘘をついているかもしれないし、一秒後には意見を変えているかもしれない。

じゃあ、友情なんて成立しないじゃないか!って自分で言っちゃったよ。

うん。哀しいけど、私はそう想っている。どんなに深く優しい想いも、ただ眺めるのと少しも変わらない。もしそれを君が見つめ合いだと感じても、眺めていると想っているところ“まで”しか確かじゃない。私が君を想っているとどれほど言葉にしても君は疑い続けられるし、確かめるすべはない。

なんでそんな哀しいこと言うの?

君が話し始めたから。君が私に話しかけたから。

なら話しかけなければこんなことは起きなかったのかな?

そうだね。ただ沈黙していれば、なにも想わなければ、なにも考えなければ、虚しさも悲しさもないだろうね。けど君はそれに耐えられなくて、私に話しかけてきた。その時点で君は大きな誤解をしていたことになる。

誤解?

純朴な「思い込み」と言った方がいいかもしれない。君は私がなにか反応するだろうと踏んでから、話しかけてきている。けど私は君に気がつかないかもしれないし、たんに君を無視するかもしれない。それでも君は話しかけた。
そんなことまで考えてないよ。

でしょ。それでいいんじゃない?

どういうこと?

そのまま。君は私に一瞬だけ賭けた。それだけ。そのとき君は確かに私を信頼していた。私の存在を疑わなかったし、私の応答も疑っていなかった。それが惰性的であれ、感情的であれ、私の存在をまず肯定した。

べつにそんな大したことをしたわけじゃないよ。

そうだね。だからそれでいいんじゃないかな。そうやって確かめようもない世界に飛び込んでみる。それは飛び込んだものしか味わえない世界。そこで今回は、ぐっと卑近になるけど、LINEの返信の無さに、応えの無さに怯えた。もともとなんの確証もない世界に自分から飛び込んでおいて、なんて愚かなことか。

なんの確証もなかったわけじゃないよ。僕は君と何度も話して、君をある程度は知っているからそうしたんだ。

でも、賭けには変わりない。もしかしたら私は病気で寝込んでいるかもしれない。
そりゃその可能性だってあるよ。
分かってるじゃん。君は私が反応するという可能性に賭けた。必ず勝てると君は想っていたのかもしれないけど、それは君の想いでしかない。
じゃあどうしたらいいのさ?

黙っているか、賭けに出るか。そのどちらか。

僕は黙っていられなかった。

そうだね。君は私に賭けてくれた。そのレートがどれくらいか、私には知る余地もない。むしろ賭けられているかどうかも、私にはわからないけどね。今度は、私がそう想っているだけ。

お互いに想ってるだけなのかな。
かもしれない。これは死ぬまで続くよ、きっと。君が望めば君はこの賭けを止めにすることもできる。レートを下げることもできるし、私じゃない人に賭けたって自由。

けど今回、僕は君に話しかけてしまった。

そうだね。それで結果的に裏切られた?

そんなことはない。と、僕は想っている。

なら良かった。私もその方が嬉しいからね。また話しかけてくれるのかな?

たぶん。

今度こそ、なんの応えもないかもしれないよ?

そうだね。でも、やっぱり僕は君に話しかけるんだろうな。友人少ないから。

そっか、可哀想なやつだね。

そうだね。でもきっと、それでいいんだ。